フレイは噴水の前で待っていた。持ってきたファッション雑誌もとっくの昔に読み終わっている。<
「まだかなぁ、イザーク」
フレイは彼是一時間この場所でイザークを待っていた。
ぼんやり空を見上げていたら、遠くから駆けてくる人影を見つけた。
大げさに頬を膨らませて、その人影を睨みつける。
「イザーク、一体何時間待たせれば気が済むのよっ!!」
「悪いな、ちょっとトラブルが・・・」
「あーもぉーいいわよ。言い訳なんて聞きたくないっ!!」
フレイが遮ってそう言うとイザークは顔を紅潮させた。
「仕方ないだろっ!!仕事が長引いたんだから!!」
「ふんっ、どーせ私より仕事の方が大事なんでしょっ!!」
フレイが膨れっ面をしてそっぽをむくと、イザークは慌てた。
「いや、そんなこと一言も言ってないだろっ!!」
フレイはイザークを睨み付けた。
イザークはその顔を見てはっとした。フレイの目が薄っすらと涙ぐんでいたからだ。
「もおいいわよ。イザークなんてだいっきらいなんだからっ!!」
「おい、ちょっと待てっ!!」
フレイは止めようとするイザークを押しのけて走り出した。
涙が頬を伝って零れ落ちるのが分かる。
「イザークのばかぁー…」
その時いきなり肩をつかまれてぐいと後ろに引っ張られた。
「きゃっ」
気づくとフレイはイザークの腕の中に居た。
「悪かった。俺が悪かった。だから、嫌いなんて言わないでくれ…」
いつもの自信満々な態度と違ってすごく頼りなさそうな、下手すると泣き出してしまいそうな声がした。
「嫌いなわけがないじゃない…」
フレイは自分が何気なく言った一言がイザークをひどく傷つけてしまったのだと気づいた。
「イザークを嫌いになれって言われてもそんな事できないもん。」
イザークはもっと強くフレイの事を抱きしめた。
「イザーク、くるしっ。」
「わ、悪い…」
イザークは慌てて手を離した。
「私、イザークのこと世界、いえ、宇宙一好きよ。」
イザークは顔を真っ赤にさせた。
フレイはそんなイザークを見て、くすっと笑った。
「ねっ、イザークは私のこと好き?」
イザークは赤くなった顔をより赤くさせた。
「も、勿論だ。」
「どの位?」
「どの位って…」
フレイはイザークの顔を見つめた。
「そ、それは、言えない。」
「なんでよっ!イザークは私のこと好きじゃないの?」
「いや、好きに決まってるだろっ。だけど、言葉になんてできない。
言葉なんかじゃ片付けられない位…好きなんだ!!」
今度はフレイが顔を真っ赤にさせた。
「イザーク…」
フレイはイザークがどれほど自分のことを大切に大切に想っていてくれているか知った。
「だ、だから、そのっ」
「いいわ、言わなくて。私分かったから。」
「ほ、ホントか!?」
フレイはイザークに微笑みかけた。
「でも私の方がイザークのことずっとずっと好きなんだから。」
イザークもフレイに微笑みかけた。
「じゃ、いきましょ。イザークは遅刻したんだからこの服買ってよねっ」
フレイはファッション雑誌に載ってる服を指し示した。
「ああ、何でも買ってやるよ。」
二人は仲良く手を繋いで歩き出した。