部下が敵に囲まれていた。
まだパイロット成りたての今回が初任務である新米。
出撃前に声をかけてやったらまだ幼さの残る顔で嬉しそうに微笑んでいた。
敵の機体と部下の機体の間に割り込み攻撃を防ごうとした。
だが一瞬遅れ、気がついた時には機体が粉々になっていた。
一瞬のことだった。
痛みはなかった。
「イザァークーーー!!!」
遠くでディアッカが叫ぶ声が聞こえる。
ディアッカ、世話になったな。
世界が暗転する。
そこでイザークの意識はぷつりと切れた。
気がつくとそこはお花畑だった。
子供の頃見たことのある懐かしい風景。
木陰に腰を下ろし、幹に寄りかかった。
真っ青の空に白い鳩が飛んでいる。
深く息を吸い込むと鼻にツンと来るが何処となく甘いハーブの匂いが微かにする。
たたっ。
誰かの足音がした気がして後ろを振り向こうとするが柔らかい手で目の前が塞がれた。
「だーれだ?」
懐かしい声がする。
胸がいっぱいになる。
「…」
イザークがいつまでたっても何も言わないのでフレイは不安になった。
「ねぇ、だーれだ?」
「…」
もう一度問いかけるが尚も黙りこくったままだ。
「ちょっと、なんとか言いなさいよ!」
フレイはカッとなったが同時に不安で心が砕けそうだった。
「もしかして、私のこと、忘れちゃった…?」
思わず泣きそうになる。
ばっと目を押さえてた手を振り払いイザークは振り向いた。
「忘れるわけ…ないだろ…」
目頭が熱くなる。
「イザーク…」
「お前のこと片時も忘れたりなんて、しなかった…フレイ…」
「イザークぅ」
イザークの胸に飛び込んできたフレイをイザークはしっかりと抱きとめた。
「フレイっ、会いたかった…」
「イザークっ、イザァークっ!!」
泣きじゃくるフレイの頭を撫でる。
「やっと会えたお前に…」
ひとしきり泣き終えて静かになったフレイをひざの上で抱きかかえながらイザークは問いかけた。
「お前…ずっとここで、待ってたのか?」
「そう。ずっとここでイザークのこと見てた。」
「一人で寂しかったろ?」
「ううん、寂しくなんかなかった。」
にっこりとフレイは微笑んだ。
「私の心はいつもイザークと一緒にいたから。」
「そうか…だがこれからはまた、離れ離れになるな…」
「どうして?これからはずっと一緒じゃないの?」
「俺はお前に会う前も、お前がいなくなってからも沢山の命を奪った。
そして沢山の人の人生をめちゃくちゃにした。
俺は到底、お前と同じところには行けない。」
「…なーんだ、そんなこと!」
「んなっ、なんだとはなんだ!!俺はお前と同じところには…」
「だから、私があんたに付いて行くのよ。」
「お前っ…」
「イザークと一緒なら何だって怖くなんてないわ。」
「フレイ…」
「私が一番恐れるのは貴方がいなくなることなんだから。」
フレイはイザークが大好きだった笑顔で微笑んだ。
後ろでドアが開く。
ごうごうともの凄い音を立てている。
真っ赤に燃える炎が見える。
「行きましょ。」
少しも怯むことなくフレイは立ち上がりイザークの手を引っ張る。
「フレイ、本当に…」
「何度言ったら分かるのよ!もう絶対に離れたりしないんだから!!」
「フレイ…」
「さあ、立って」
「フレイ、俺も、お前のこと二度と離したりしない。」
二人なら何も怖くない。
たとえこの身が地獄の業火で燃え尽きようとも、
お前と/貴方と一緒なら…。