4    屋上





屋上。

そこは授業をサボる生徒にとって格好の隠れ家。

今日もまた、授業をサボる生徒がそこで休憩を取っていた...のではなかった。
そこにいたのは何と教師であるはずのアーサー。
何やら落ち込んだ顔で空を見上げていた。



「ホント、嫌んなっちゃうよな…」
はぁ〜、と、ため息をつく。
見ている人までも憂鬱にしてしまうような暗い顔。

いつも能天気ですっ呆けた感じの彼をここまで追い込んだのは、勿論、彼女だった。

「アーサー!また間違えたの!?これで何度目?」
「アーサー!これやっといてって言ったでしょ?何でやっとかないの!?」
「アーサー!違うでしょ!・・・(以下略)」

「ホント、転職考えようかな・・・」

「どうした?アーサー?何か悩み事かね?」

「ひっ・・・デュ、デュランダル先生!」
いきなり背後に現れたデュランダルにアーサーは驚きを隠せない。
バレたかな、とひやひやしてると、デュランダルは柔和な顔で言った。

「私に話してごらん。」

流石に貴方のタリア先生が嫌で転職を考えてます、などとは言えるはずもなくただ、あははは、と誤魔化し笑いをしておく。

「いえいえ、悩みなんて!
 私、悩みがなくて幸せそうね、などとよく言われますから!」
アーサーは笑って答えた。

「そうか、なら私の悩みを聞いてはくれないだろうか・・・?」

「先生の、悩み?」
アーサーは不思議に思って聞き返した。

「ああ、私の悩みだ。
 実はね、タリアがね...」
タリア、という名前を聞き、アーサーは一瞬身を竦ませた。

―まさか、何か小言でも言われるのか!?

「この頃、冷たいんだよ…」


ガクッ

漫画ならこんな効果音が付きそうな位アーサーは派手にこけた。

「何だか、愛が、感じられんのだよ…」

「ははっ・・・」
笑う以外に今の彼に何ができるのだろうか。

とりあえず、笑っておけ。
彼の脳はそう命令を下した。

「ねぇ、アーサー。私はどうすればいいのだ!?」

デゥランダルは勢い込んでずずっとアーサーの方に踏み込んでくる。

「いや〜私に言われましても・・・」

思わず、後ずさりをしながら笑う。

「タリアは、タリアは・・・」

うわ言のように名前を繰り返し呼び、涙ぐんだ目で、アーサーのことを見つめてくる。

知らない人が見たら誤解してしまうかもしれないような場面。

アーサーは端まで追い詰められて逃げ場を失った。

その時その場を治めたのは、噂の人物の怒鳴り声だった。

「デュランダル先生!」

屋上の入り口の所に仁王立ちしている、般若のような顔をしたタリア。
アーサーの顔は一瞬のうちに血の気を失った。

「タァリア!」
喜び勇んでデュランダルは駆け寄る。

「まったく、こんな所にいらしたんですか?
 探したんですよ!」

「タリア、そんなに私のことを・・・」
デュランダルは涙を湛えた目でタリアを見つめる。

「いい加減にしてください!仕事を途中でほっぽりだすなんて!」

「す、すまない・・・」
一気にしゅんとなる。

「ほら、行きますよ…」
少し優しい口調でタリアは促す。

すたすたと、階段を下りていく途中で、くるっとタリアは振り返った。

「アーサー。」

アーサーはびくっと全身を硬直させた。
「は、はいっ!」

「貴方、勿論、仕事終わらせてからここで油売ってるのよね?」

「は、はいっ!勿論であります!」
言ってしまってからアーサーはしまったと思った。
まだ、少し残っているのだ。

「そう、それならいいんだけど・・・」
にやっと冷笑を浮かべて、タリアはデュランダルを引きずりながら去っていった。

「や、やばい・・・」
もはや腰の抜けてしまったアーサーは立ち上がることもできない。

「て、転職しよう…」

アーサーが本気で転職について考えたのは言うまでもない。






〈あとがき〉
今回はデュランダルのタリア大好きっぷりと、アーサーの苦難メインで書きました。
普通、屋上と来たらまあ、イザフレとかシンステとかをラブラブで書こうと思ったのですが、
何故か途中でおもいっきり方向転換してギャグになってしまいました。
ま、いっか(笑
アーサーは教師版アスランポジションで見なしているので、これからもどんどん虐め・・・もとい可愛がってあげたいです☆

ちなみに悩みがなくて幸せそうねとよく言われるのは私です・・・(笑



HOME