あーのどかだなぁ…―
晴れた空を見上げながらシンはおもいっきり息を吸った。
空には白い雲がいくつか浮かんでいる。
シンが寝っ転がっているなだらかな丘は海と空を眺めることができる。
春の花も咲き始め深緑豊かな風景が広がる。
気持ち良いなぁ…―
目を閉じて風を感じる。
「ふぁ〜」
思わず欠伸が出た。
なんか眠くなって来た…―
うつらうつらとまどろんでいると急に体の上に重みを感じた。
何だ?一体…まさかマユか?マユが上に乗ってるのか?―
眠ったふりをしてると上に乗ってる誰かは顔を近付けて来た。
よし!今だ!!―
「マユ!悪い子にはこうだ!!こちょこちょこちょー!」
「キャア!シン!!くすぐっ…た…ぁいっ」
「ススススステラ!?」
目の前には頬を真っ赤に染めて荒い息を吐くステラがいた。
「あわわわ。ご、ごめんっ!」
心臓は有り得ないスピードで打ち鳴らし急速に体が熱くなってくる。
何で!?どうしてステラがここに!?―
「シン?」
シンの上にちょこんと乗ったままステラはシンの顔を覗き見た。
ちょっ!ステラ近付き過ぎ…!―
顔が真っ赤になるのが分かる。
どどどどどうすればいいんだよ〜!―
「おーい、ステラー、ご飯できたぞ〜」
その時丘の上の方から声がした。
助かったぁぁぁ―
ほーっと胸を撫で下ろすシンであったが、安心したのもつかの間凄まじい怒号が響いた。
「ススススステラァァァァ!ななな何やってんだぁぁ!!!!」
駆け出してきた影はひょいとステラをシンの上からどかした。
「おおおおお前ぇぇぇぇ〜!!!」
仮面を付けたその男は寝ているシンの顔に自分の顔を近づけてきた。
「うわっ!!」
「ステラに何をしたぁぁぁ!!」
「何をって何もしてなんかいないよ〜!!!」
突然現れた不審な男に対しシンは半べそをかきながら弁解した。
「こぉのガキぃぃ!!!」
「ひぃぃぃ!!!」
「ネオ?」
ステラがその男の顔を覗き込む。
「ステラ!大丈夫だったかい?この変態男はすぐに退治するからね。」
シンを問い詰める時とは一変、優しい声でステラの頭を撫でる。
「変態だって!?あんたこそ一体何なんだよ!!変な仮面なんか付けて!!変態はそっちだろ!?」
「何だって?教えてやろうか坊主。私はネオ・ロアノーク、ステラの保護者だよ。」
「保護者ぁ?」
「そう、保護者。」
指をぽきぽき鳴らしながら、仮面の上からでも満面の笑みだということが分かる位の笑みをこぼしつつ、
ネオはシンににじり寄った。
「ネオ、シン、いじめちゃ駄目。」
すると、ステラがネオとシンの間に割り込んできた。
「ステラ…」
シンは感激してステラの背中を見つめた。
そんなに俺のこと……―
「シンはステラの…」
ごくっ。
シンは思わず生唾を飲み込んだ。
「友達なの!!」
・・・ですよね〜―
お約束の展開にシンはずるっとこけた。
そんなシンを見てネオは心底同情した。
「じゃね、シン。」
ステラはすっと立ち上がり駆けていく。
「頑張りな、坊主。」
ぽんっと座り込んだままのシンの肩を叩いてネオも立ち去る。
数十分後、放心状態からやっと立ち直りシンはふらりと立ち上がった。
いつのまにか日暮れ時を迎えている。
海に溶け込む太陽に向かってシンは声の限りを尽くして叫んだ。
「うわぁぁぁ!太陽の馬鹿やろーーーー!!」